アスペルガー症候群の夫(妻)とうまく付き合うために知っておきたい基礎知識

最近は、発達障がいという言葉を耳にする機会も多くなってきたと思いますが、今日は発達障がいの中の1つ、アスペルガー症候群の基礎知識について書きたいと思います。
そもそもアスペルガー症候群とは?
※広汎性発達障害は、平成25年4月から自閉症スペクトラムに改められました。
アスペルガー症候群とは、知的発達の遅れを伴わず、かつ、自閉症の特徴のうち言葉の発達の遅れを伴わないものである。なお、高機能自閉症やアスペルガー症候群は、広汎性発達障害に分類されるものである。
高機能自閉症とは、3歳位までに現れ、他人との社会的関係の形成の困難さ、言葉の発達の遅れ、興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害である自閉症のうち、知的発達の遅れを伴わないものをいう。
また、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。
〈文部科学省のホームページより〉
アスペルガー症候群の発見
アスペルガー症候群が世界中に知られるようになったのは、第2次世界大戦の真っ只中の1944年に、オーストリアの小児科医、ハンス・アスペルガーが最初に論文を発表したことがきっかけでした。アスペルガーの論文には、1943年にレオ・カナーが発表した、
“言葉を話さない、言葉を話してもコミュニケーションをとることが難しいといわれる特徴の自閉症(カナータイプの自閉症といいます)”とは違う、
知的な障害を伴わない自閉症のタイプがあることが書かれていたんですね。
※ダスティンホフマンとトムクルーズが出演した映画「レインマン」でダスティンホフマンが演じた役が、カナータイプの自閉症です。
その後、イギリスの児童精神科医ローナ・ウィングが、最初に発表したハンス・アスペルガーさんの名前にちなみ、「アスペルガー症候群」と名づけ、アスペルガー症候群が世界中に知られるようになったのです。
ここまでをまとめると
1943年にレオ・カナーが、言葉を話さない・話してもコミュニケーションをとることが難しい特徴の自閉症という脳の障害があることを発見し、翌年の1944年に、外見からは自閉症かどうか見分けがつかない、言葉も普通に話し知能も高い自閉症があることをハンス・アスペルガーが発見したということなんですね。
多くの人が知っている自閉症とは?
一般的に知られている自閉症は、映画レインマンに出てくるような、人とあまり話さないカナータイプの自閉症ですが、アスペルガー症候群や高機能自閉症、広汎性発達障害という診断名がついた知能も高く、言葉も普通に話す外見からはわからないタイプの自閉症もあるのです。自閉症スペクトラムとは?
2013年5月に、19年ぶりにアメリカ精神医学会の診断基準DSMが改訂され、これまでに高機能自閉症やアスペルガー症候群などの総称として使用されていた広汎性発達障害が、新しいDSM5では「自閉症スペクトラム」という診断名に変更されました。このDSMは、”アメリカ精神医学会”という一つの団体によってつくられた精神障害の診断基準で、DSMの診断基準は、いまや世界中で使われていて、日本もこの診断基準に基づいて診断をしているといわれています。
アスペルガー症候群の特徴とは?
- 素直で正直(だまされやすい)
- うそがつけない。うそをつくのが下手。
- 興味のあることをその場の状況に関係なく一方的に話す。
- 相手の心を読むことが難しい。
- 場の雰囲気が読めない。
- 否定的なことを言うと怒る。
- どんな時もマイペース。
- 「手伝って」と言わないと手伝わない。
- 他の人が気にしないようなことに強いこだわりがある。
- 過去のことをずっと覚えている。
- 状況の変化に対応することが難しい(混乱する)。
- 言葉通りに解釈をする(言葉の裏の意味を読み取れない)。
- 冗談が通じない。
- 質問をしても返答が遅い(返答しない)。
- 会話がかみあわない。
- 人の話を聞かない、理解するのが苦手。
- 表情やジェスチャーなどから相手の意図を読み取ることができない。
- 人の目をジーと見る。視線を合わせられない。視線が泳ぐ。
- 時間を守れない。
- 1つのことに集中すると、とことんやる。
- 誰かに「終わり」と言われるまでやり続ける。
- 「適当」「これぐらい」「もう少し」など曖昧な言葉がわからない。
- 自分が思っていること考えていることは相手もそうだと思っている。
- 細かい作業も集中して正確にこなせる。
- 好きなことには回りに目もくれず集中する。
- 何かをしている時に声をかけても気づかない。
- 水槽を眺めているのが好き。
- 空を眺めているのが好き。
- 友達が少ない。
- 頑固な面がある。
- 興味がかたよっている。
- 臨機応変に対応できないため、いつも通りが好き。
- 融通がきなかい。
- 決まりはきちんと守る(守らない人に怒る)。
- 平気で失礼なことを言う(本人に悪気はない)。
- 友達のつくり方がわからない。
- 他人への興味がうすい。
- 誘いをうまく断れない。誘えない。
- かんしゃくもち。
- 雑談ができない。
- 愛情が感じられない。
- うつや不安障害になりやすい。
- 運動が苦手、スポーツはするがうまくない。
アスペルガー症候群は親の育て方が原因?
昔は、親の育て方やしつけのせいが原因だと言われていた時期もありました。しかし現在は、先天的な脳の機能不全が原因であることがはっきりわかっています。ですから、親の育て方や育った環境が原因でアスペルガー症候群になることは絶対にないんですね。ただ、パーソナリティー障害や愛着障害などの一部の人には、アスペルガー症候群と似たような特徴が見られることもありますが、 そもそもアスペルガー症候群は脳の機能不全が原因なので、全く違うといえるでしょう。
最後に
アスペルガー症候群の夫や妻と付き合うのは、ある意味大変かもしれません。私に相談をされた方の中には、「愛情が感じられない」「夫婦なのにいつも1人でいるような感じがする」など、孤独感を感じている方がいらっしゃいました。中には理解ができなかったり、愛情が感じられず、離婚してしまった方もいます。
外見からはどこに、どのような障害があるかわからないため、相手の言動が理解できず、ついイライラすることも多いのではないでしょうか。
アスペルガー症候群とADHD(注意欠陥多動性障害)LD(学習障害)の3つを持つ、笹森理恵さん(NHKのテレビ番組に出ることがあります)の旦那さんは、笹森さんを理解するために、自閉症やADHDなど発達障がいの本をたくさん読んで学んだそうです。
それでも、理解するのに5年はかかったとテレビのインタビューで答えていました。
アスペルガー症候群をはじめ、自閉症や広汎性発達障がいの人たちの特性は、本当にわかりづらいものです。
しかし、実際には本人たちの方が、周りの人や社会から理解されずに悩み、つらい思いをしていることも事実なんですね。
アスペルガー症候群の様々な特徴は、脳の機能不全が原因なので、夫や妻がアスペルガー症候群の方は、その特徴の原因がわかれば少しづつ理解できるようになってきます。
⇒アスペルガー症候群など発達障害のことでお悩みの方は、こちらのページもご覧ください。